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教員インタビュー 平尾 雅彦 教授

教員インタビュー 平尾 雅彦 教授

「化学知」で持続可能なシステムをデザインする

 私たちは、遠い過去に地球に蓄積された化石資源を燃料や原料として利用し、さまざまな「もの」をつくり、便利で豊かな社会を築いてきました。一方で、環境や安全に関わる地球規模の課題も抱えるようになりました。次の世代、またその次の世代も同じように豊かに安心して暮らすことができる持続可能な社会をデザインし、実際に構築していくことが私たちの世代の務めです。そのためには再生可能で安全なエネルギーシステム、化石資源に頼らないものづくり、地域間や世代間での公平な食糧・水・医療などの享受が大切になります。これらの実現には多くの技術革新=イノベーションが求められています。「化学システム工学」は、物質とエネルギーを変換し、輸送し、蓄え、使うための「化学知」を最大限に活用し、再生可能エネルギーの生産、バイオマス資源の活用、水や空気の浄化、安全な医療などの技術イノベーションを生み出しています。これに加えて、技術と技術を結びつけてシステムとして社会に実現することも工学の役割ととらえています。


 化学プラントと呼ばれる巨大な製造システムをデザインすることで、「化学知」から産業技術を実現してきた「化学システム工学」は、今、そのデザイン力を社会システムにまで広げようとしています。例えば、循環的な資源利用を可能にするリサイクルは、回収や分別、輸送、再生という産業技術に加えて、経済や法律も含めて消費者や行政も巻き込んだ社会技術としてデザインしていかなければなりません。ここでは、物質の性質や変換などの「化学知」が不可欠なのはもちろんのこと、そのシステムを持続可能性の観点から評価する知も必要です。旧来の企業の収益という視点だけではなく、温暖化や資源消費などの地球環境影響、人の健康や生態系の保全、安全性、社会的な費用、さらに人々の豊かさまでをも「化学知」に付け加え、統合的に持続可能な システムを評価し、デザインしていきます。


 私が専門とするライフサイクル工学は、資源を獲得し、「もの」をつくり、使い、リサイクルや廃棄をするという「もの」の一生をデザインする学問です。私が駒場時代に明け暮れたサイクリングは、個別のパーツから最高の性能を発揮する自転車を組み上げ、山道をこぎ回り、最大の満足感を得るというライフサイクル工学の実践だったように思います。これまでに蓄えられた「化学知」を学び、そこに皆さんの発想で新たな「知」を積み重ね、持続可能なシステムをデザインする喜びを「化学システム工学」で経験してください。

 

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平尾 雅彦 教授

1987年東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程満期退学。

同年(株)日立製作所基礎研究所。

1989年工学博士(化学工学専攻)。

1996年東京大学大学院工学系研究科講師。

2006年より現職。

ライフサイクル工学が専門。

趣味はサイクリング。