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教員インタビュー 酒井 康行 教授

教員インタビュー 酒井 康行 教授

化学システム工学で基礎生物医学の成果を次世代の医療や産業に

 化学システム工学の方法論や考え方を基礎として、再生医療や薬・化学物質等のヒト影響評価(細胞アッセイ)のための生体組織工学(ティシューエンジニアリング)、つまり、ヒトの様々な細胞を培養して三次元的・階層的に組織する研究を行っています。生体組織では、①細胞が階層的に高密度かつ三次元化されているにも関わらず、②血管網の配備により良好な機能発現が達成されていますが、生体外での血管構築は容易でなく、生体組織工学においては、高密度三次元化と物質交換の両立は極めて困難な課題であると言えます。


 例えば、再生医療のための大型組織の再構築を本当に目指すとすると、分岐合流を繰り返す血管様の流路ネットワークの設計・配備と酸素運搬体が必要となります。一方、細胞アッセイのための小さな組織としては、細胞が組織としての働きを示すようになる最小限の集団化を図りつつも、生体と同様の絶対的代謝速度を再現することが究極の理想です。このような課題に対して化学システム工学の方法論は、スケールの大小に関わらず、酸素や栄養素・老廃物、外部から添加された様々な物質およびその代謝物等の輸送(流れ・拡散)や反応の定量的な扱いとその最適化を可能とし、基本的な設計指針を与えます。


 一方、再生医療や細胞アッセイのための組織構築では、最終的には様々な免疫型を持ったヒト幹細胞・臓器前駆細胞の増殖分化・成熟化制御等に関する最新の基礎生物学医学的知見、微細造形・マテリアルなどに関する最新の工学的技術や数理解析、人体の代謝応答や疾患時の変化等に関する臨床医学・薬学的知見と技術をバランスよく融合活用することが必須です。このときに、化学システム工学の別の特徴である、"課題解決型思考"や"最適化思考"がとても役に立ちます。具体的には、将来達成すべき目的から時間軸を遡りつつ、必要な様々な知見・技術を最適配置することで"ロードマップ"を描き、それに合わせて実際の融合利用を進める、ということです。こうすれば、目的達成までの時間を最短にすることができるばかりでなく、たとえ途 中で予期せぬ画期的な発見がなされた場合でも、慌てずにその有効性を冷静に判断できることでしょう。


 化学システム工学の"方法論"を学ぶための様々な授業や実習、それに加えて人類が解決すべき最先端のテーマを題材とした卒業研究や修士・博士論文の研究を経て"化学システム工学の考え方=課題解決型・俯瞰的思考"を実践しておけば、将来、"ものづくり"が関わるあらゆる分野で大きく寄与し続けることができます。

 

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酒井 康行 教授

1991年東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程中途退学。

同年東京大学生産技術研究所物質・環境部門助手。

1993年博士(工学)(化学工学専攻)。

(1997-1998年The Department of Chemical Engineering, University of Rochester, Visiting Scientist)

2003年東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター・准教授。

2008年東京大学生産技術研究所物質・環境系部門教授。

2014年より東京大学生産技術研究所統合バイオメディカルシステム国際研究センターセンター長。

2015年より現職。

再生医療や細胞アッセイのための生体組織工学が専門。

趣味は模型制作。