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教員インタビュー 戸野倉 賢一 教授

教員インタビュー 戸野倉 賢一 教授

大気微量物質の動態解明による大気環境問題解決へのアプローチ

 我々は地球温暖化をはじめとした様々な環境に関する問題に直面しています。これらの問題を解決し、持続可能な社会を構築していくためには、環境をシステムととらえ全体を俯瞰し広い視野から総合的にとらえたうえで、理解することが重要です。大気環境の問題は、反応・輸送・物質などの各要素が相互作用することにより引き起こされています。従って、我々が直面している大気環境問題を解決するには、大気環境をシステムととらえ、システムを構成する要素と要素間の相互作用を輸送に関わる流体力学の知見や反応や物質に関わる化学的な知見を融合して理解していくことが重要であると言えます。


 例えば、対流圏オゾンやPM2.5などの健康影響をもたらす大気2次生成物質を削減するには、原因物質である揮発性有機化合物や窒素酸化物が大気中でどのように反応するのかという化学反応の知識と排出実態や環境動態を把握するための統計解析、気象学の知見、フィールドでの測定技術が必要になります。化学や工学的技術などのコアとなる要素知識・技術を融合し、大気環境をシステムとしてとらえる「化学システム工学」による大気環境問題へのアプローチが、大気質の改善に向けた対策に対して有効であると言えるでしょう。


 持続可能な社会の実現には、直面している環境問題の解決だけでなく、我々の生活の変化に伴うこれから起こりえる環境問題を予測し、その事前対策を講じることが必要不可欠です。燃料電池車や電気自動車などの次世代自動車の導入により自動車からの二酸化炭素の排出量を削減し環境負荷を低減させることが推進されています。その導入にあたっては、インフラ整備、エネルギー需要、排出ガスの変化などに伴う様々な環境の変化が引き起こります。これらを多角的な視点から評価し、起こりえる環境問題を抽出し未然に防止する策を講じなければなりません。ここでも、環境をシステムととらえ、各要素の知見に基づき要素間の相互作用についてシステム論的アプローチを用いて理解していく、「化学システム工学」の思考が重要な役割を果たします。


 私たちの研究室では、大気環境問題の原因となる大気微量物質の大気環境動態を室内実験や国内外でのフィールド観測を通じて明らかにし、大気化学輸送モデルに基づいたシミュレーションによって大気環境問題の将来予測やその解決に向けた効果的な対策の提案をすることに取り組んでいます。「化学システム工学」はその実現を可能にする学問です。

 

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戸野倉 健一 教授

1992年北海道大学大学院理学研究科化学専攻博士課程短縮修了、博士(理学)。

1993年岡崎国立共同研究機構分子科学研究所助手。

1997年東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻助手。

2003年東京大学環境安全研究センター助教授。

2011年より現職。

大気環境化学が専門。

趣味はジョギング。